ルリタテハの飼育観察記録

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ある年のルリタテハ(蝶)の飼育観察記録です。
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夏の朝、窓を開けシャッターを上げると、愛培のホトトギス(杜鵑草)から青っぽい蝶が飛びあがりました。しばらくすると、また、戻ってきて、なにやら産卵している様子。ルリタテハでした。幼虫の食草が、ホトトギス(そのほかに、サルトリイバラやユリも)で、普通は、森や林や公園に生息している蝶ですが、我が家のように、ホトトギスを育てていたり、植えこんである住宅街でも生息しているようです。濃紺の地に瑠璃色の帯があり、美しい蝶です。ただ、裏翅は、閉じると保護色になる樹皮や枯葉の色をしています。ホトトギスの葉の上には、産み付けられた卵がいくつもありました。
 
8月14日
ホトトギスの葉の上で産卵中のルリタテハ♀
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産卵して、飛び立った後には・・・
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卵は、1mm以下で、おもちゃかぼちゃのミニミニ版のようで、縦縞模様がありました。といっても、あまりに小さいので、写真でようやく確認できました。幼虫が育つとホトトギスの葉は食いちぎられるし、花を見るか、ルリタテハを育てるか、悩むところですが、結局、自然に任せることにしました。
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卵はすべて、かぼちゃに例えれば、お尻の部分が、葉の表面にくっついていました。水撒きのシャワー程度の水でも流れ落ちることはありませんでした。もちろん、雨が降っても大丈夫。
 
8月14日に成虫が産み付けた卵は、まだ孵化しませんが、ほかの鉢植えのホトトギスの葉が食べられていたので、探したところ、幼虫がいました。ルリタテハの幼虫は、葉の裏側に潜む習性があるようです。6頭いましたが、その中で、1頭が、脱皮したばかりでした。棘は、腹部の直径と同じくらい長く、体長は15mmほどなので、3齢幼虫ではないかと思います。脱皮したばかりで上が頭部で、左の黒いものは抜け殻です。
8月29日
体長:15mm程度ですので、まだ3齢でしょう。
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4齢幼虫 体長:30mmほど
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写真のルリタテハの幼虫は、すべて、異なる個体です。1頭だけ、5齢(終齢)幼虫になっていました。そっと、手に取って、葉が茂っているホトトギスへ移しましたが、棘は、わずかにチクリとしますが、毒針ではありません。
8月31日
5齢(終齢)幼虫 体長:30mmほど
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蛹化するときの脱皮の最後の瞬間です。頭部(写真の下)から尾部(上)に向かって、黒い皮を脱いでいきます。そして、体を大きく揺すって、丸くなった抜け殻を振り落とします。その後も、しばらく、激しく体を揺らせます。天井にぶら下がった終齢幼虫が、脱皮を始めてから、蛹になって、揺れが治まるまで、30分以上かかりました。
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植木鉢にいた幼虫は、鉢の側面で蛹化して付着してしまいましたが、同じタテハチョウ科のツマグロヒョウモンと似たような形をしています。どちらも尾部の1点を付着させて、ぶら下がります。腹部側には、金属光沢に光る突起もあります。
なお、アゲハチョウ科のナミアゲハやクロアゲハは、絹糸で蛹体に帯をかけて、体を支持する帯蛹ですが、ルリタテハほかのタテハチョウ科の仲間は、このように、蛹の一端(尾部)を上に固定して垂下する垂蛹です。
9月4日
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保護観察中のルリタテハの蛹です。腹部側の金属光沢の突起は、4個しかありません。どこにも棘はありません。ツマグロヒョウモンは、10個あって、突起の先が尖っています。同じタテハチョウ科でも、違いがあります。
ルリタテハの蛹 体長:個体によって異なり27~32mm
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蛹になってから、ちょうど1週間で、9月15日に2頭、もう1頭もたしか1週間で、いずれも、早朝、羽化しました。裏翅は、蝶の翅とはとても思えないような色です。
成虫は、花から採蜜するよりも、樹液や動物の糞の水分を吸うそうです。それゆえか、裏翅は、樹皮や枯葉に擬態しているような濃い茶色の保護色です。
翅が、飛べる状態に伸びてきたところです。
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紅いのは、羽化したときに、肛門から出た「羽化液」(蛹から成虫になるまでに必要だった体液の老廃物)です。同じタテハチョウ科のツマグロヒョウモンもこのような紅い体液を出します。
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表翅は、裏翅とは、まったく異なり、その名の如く、瑠璃色の帯模様があり、とてもきれいです。 前翅開張は、65mmほどでした。
ルリタテハ(♀)の表翅
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柿の葉の上で、風がやむのを待っている、これは、たぶん、♂でしょう。しばらくして秋の空に飛び立ちました。
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♀は♂より翅と瑠璃色の帯が幅広だそうですが、前翅の先端の形でも雌雄がわかります。この個体は♂でしょう。
15日に羽化した1頭
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今日の名言:
 
世の中に実に美しいものが沢山あることを思うと、自分は死ねなかった。だから君も、死ぬには美しすぎるものが人生には多々ある、ということを発見するようにしなさい。 ヘルマン・ヘッセ(ドイツの小説家、詩人、ノーベル文学賞受賞者、代表作:車輪の下)