クロアゲハの飼育観察記録

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クロアゲハ(蝶)の飼育観察記録です。
 
羽化の瞬間
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近所の温州ミカンの木で、クロアゲハの幼虫を見つけました。孵卵(ふらん=卵から孵(かえ)る)して一週間ほどの若齢(じゃくれい)幼虫でした。蛹(さなぎ)になる前の終齢幼虫(5齢)になるまで、脱皮を繰り返します(脱皮するたびに、+1齢)。この個体は、たぶん2齢でしょう。
5月15日 体長:9mm
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5月16日 体長:9mm
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5月17日 体長:11mm
体長が2mm伸びて、体をよくくねらせます。
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5月18日 体長:12mm
昨日から、1回、脱皮したようにも見えますが、未確認です。この黒褐色は鳥の糞に、白い部分は鳥の尿の色をしていて、防衛のために擬態(ぎたい)しているのだそうです。
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5月19日 体長:19mm
急に大きくなりました。このあたりが3齢でしょう。
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5月20日 体長:20mm
このクロアゲハは、ナミアゲハよりも活発に動きます。色は褐色が少し、濃くなってきました。
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5月21日 体長:24mm
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5月22日 体長:31mm
昨日から7mmも大きくなっていますが、ほとんど動きません。
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5月23日 体長:35mm
朝まで写真のように4齢でした。
夜に終齢(5齢)幼虫に脱皮していました。
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5月24日 体長:39mm
終齢(5齢)幼虫
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5月25日 体長:53mm
ミカンの葉をよく食べて、体長は、一日でおよそ1cm以上、伸びました。
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頭部は、いつもは胸部の中に入っています。移動したり、葉を食べるときに、頭部を出します。胸部の目のように見えるのは、眼状紋です。大きな目があるように見せかけて、身を守るためなのでしょう。本当の目は、頭部の左右に6つずつありますが、おそらく、明るさがわかる程度でしょう。葉を食べるときは、外周部分をひと口で1mmほどを縦に削るように(つまり、薄い板の薄い側面に鉋(かんな)をかけるように)して食べます。中心の硬い部分の葉脈を残して、一枚を半分ずつ、上手に食べます。
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5月26日 体長:55mm
日中はほとんど動かず、夕方、暗くなった頃には、葉を食べながら活発に動いています。これも外敵からの防衛のためなのでしょう。
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5月27日 まだ、成長しています。体長が63mmにもなりました。ナミアゲハよりもおよそ20mmも大きく(およそ1.5倍にも)なりました。ナミアゲハに比べて、食欲は旺盛でしたので、その差なのかもしれません。
左の丸く飛び出している部分が頭部です。眼状紋は、蛇の目のようです。(成虫の脚に対応している)細い前脚が6本(成虫の6脚に対応?)、太い腹脚が10本(8本は腹部に、2本は尾部にある)で、ミカンの枝では、前進、後進、Uターン、なんでもできます。器用に飼育箱の縁も回ります。
この個体も、胸部の頭側の先端から、威嚇のための濃いピンク色の(臭いを出す)臭角を出すことはありませんでした。驚かすようなことをしなかったからでしょう。
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5月28日 体長:37mmほど 前蛹(ぜんよう)
朝、蛹化の体勢に入って、飼育箱の蓋の裏にぶら下がっていました。
夕方も変わらず、体はときおり、ピクピク動いていました。天井に2か所、両端を付着させて、たぶん複数の糸からなるひとつの輪を作り、体をその輪の中に入れています。尾部も、蓋に付着しています。逆さまになって動いたときに、落ちないように、天井には、足をからみつけて移動できるようにするための糸を蜘蛛の糸のように張った跡が見られます。ミカンの葉などのツルツルした表面を歩くときも、このような糸を張って、その上を歩いて移動します。
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5月29日 体長:39mm
朝、すでに蛹になっていました。蛹化直後の体長は、ナミアゲハよりも7~8mm大きいです。上蓋にぶら下がっていたので、ナミアゲハの1頭目のように落下しないよう、正常なぶら下がり方にするため、飼育箱の向きを変えてやりました。
28日の状態で、脱皮して、たぶん、再び、尾部からその輪の中に入り、体を、昨日と同じような状態にして、固定して、固い蛹となるのでしょう。(上記は、一部、推測です。機会があれば、観察してみたいものです。)それにしても、昆虫の知恵には驚くことばかりです。
左上の円内の写真のように、白い糸を紡いで、2か所で、接着し、糸の輪に体を通して、右下の円内の写真のように、胸部と腹部の境界で、体に少し食い込んだような状態で、体を支えています。
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蛹化したときの抜け殻もぶら下がっていました。頭部が下で、ここから胸部にかけて裂けています。ここから抜け出したようです。頭部以外は縮んでしまっていますが、白い腹脚の跡は残っています。
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あとには、大量の糞が残っていました。食草は、温州ミカンの葉だけ与えました。ミカンの葉だけから蝶が誕生するのも不思議といえば不思議です。なお、ナミアゲハの食草は、ミカン科の植物で、温州ミカンのほか、カラタチ、スダチ、ユズ、キンカン、レモン、サンショウ、キハダなどの葉です。
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5月30日 外観上、目立った変化はありません。
5月31日~6月1日 変化はありません。
6月2日 変化はありません。
蛹化後、5日目。
6月3日~5日 変化はありません。
4日、撮影。
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6月6日~8日 変化はありません。
6月9日 蛹化後、12日目。腹部の側部と尾部の一部の白い色が目立つようになってきました。体は、白い糸でしっかり支えられています。抜け殻はまだ、糸でぶら下がったままです。
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6月11日 蛹化後、14日目。
9時撮影
朝、蛹の色が変わっていました。
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11時撮影
腹部が膨らみ、色も変わりました。羽化直前と思い、観察することにしました。
羽化したときの写真からわかるように、写真の手前側が成虫の胸部と腹部の背中(上)側になります。上部が、もちろん、頭部です。体がどのような向きで収まっていたのかは、わかりましたが、蛹の頭部に耳のように見えていたところにはなにが収まっていたのか、触角だったのか、あるいは、空で、擬態の一部だったのか、謎が残りました。
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11時31分撮影
ようやく、羽化しました。
頭を出すところは、タッチの差で、見逃しましたが、脱皮直後(およそ2分後)です。このあと、10数秒後には、蛹の殻から体全体が抜け出ました。
後翅前縁に黄白色の横帯があるのがわかりましたので、クロアゲハの♂(オス)と同定しました。
クロアゲハの雌雄の同定ですが、後翅表前縁に黄白色の横帯があるのが♂です。翅の左側にわずかにその黄白色が見えています。下の4枚目の全体が写った成虫の写真では、後翅表の中ほどの外縁に三日月状の赤斑がぽつんとありますが、♀は、もっと大きな赤斑で、そのほかにも三日月状の赤斑がいくつかあります。
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11時32分
1分経過。まだ、翅は、縮んだままですが、このあと、徐々に、拡がってゆきました。
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11時38分
翅が拡がり、模様もはっきりしてきました。
口吻は、羽化したばかりのときは、2枚です。左右が重ね合わさると、ストローのようになって、伸ばしていましたが、そのあと、ゼンマイのように丸まりました。蝶は花蜜や水にこの口吻を当てて、(肺がないので)吸うのではなく、毛細管現象で、体に取り込みます。
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12時30分
すっかり翅も拡がりました。
開張:およそ10cm
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14時30分
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あとに残った抜け殻からは、淡い黄土色の体液が流れ落ちました。
3時間ほども庭の植木の葉の上で、翅を休めていましたが、飛んで行きました。
そして、翌日、6月12日。昨夜来の雨が、ようやく、上がって、夕日が差し始めたところに、庭の椿の葉陰からクロアゲハが飛び出し、少しの間、ひらひらと舞っていましたが、隣家の壁に翅を拡げて、とまりました。昨日、飛び立った♂のクロアゲハでした。葉陰で、雨を凌いで、日が差し始めたので、飛び立ったのでしょう。若い蝶も自然界で生き延びる知恵をもっています。10分ほど翅を乾かしてから、梅雨の晴れ間の空へと飛んで行きました。
最後の挨拶に舞姿を見せて、写真にも撮らせてくれたような気がしました。
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