ツマグロヒョウモンの飼育観察記録

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道を這っていたツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)(タテハチョウ科)の幼虫を近所の小学生が見つけて教えてくれました。虫かごで飼育して、観察しました。それ以来、庭のスミレで育ったツグロヒョウモンを保護観察しています。毎夏、10~20頭ほど。
 
ツマグロヒョウモンは、1980年代までは関西以西に生息していたということですが、食草であるスミレの仲間のパンジーやビオラなどの園芸品種が出回るにつれ、さらに、温暖化の影響もあるのかもしれませんが、本州を北上しつつあります。
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産卵から成虫になるまでは、およそ4週間。孵化(ふか)すると1齢(れい)、その後、脱皮を繰り返して、終齢になり、蛹化します。終齢が5齢か6齢なのか、いまだ未確認です。その後、羽化して成虫になります。
 
7月21日16時: 終齢(6齢?)幼虫 体長:未計測
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棘(とげ)状の突起が根元まで黒い方(画像では右側)が頭部です。この幼虫の食草は、スミレ科の植物です。葉を与え続けていますが、日に日に大きくなりました。日光浴で外に出したところです。無事に羽化して、空を舞う日が来ますよう・・・
7月25日10時: 終齢幼虫 体長:4cm
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逆さまになって虫かごの蓋の裏を這っていました。体長が1cmも短くなっていました。
7月26日15時40分: 終齢幼虫 体長:3cm
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虫かごの蓋の裏に頭を下にして、ぶら下がりました。少々、かごを揺らしても、落ちることはありません。自然の状況で、もちろん、風にも雨にも十分耐えられます。ナミアゲハやクロアゲハなどのアゲハチョウ科は、糸を出して体を胸部で支える帯蛹ですが、タテハチョウ科は、尾部を上にくっつけて垂下する垂蛹です。
7月26日16時40分: 前蛹(ぜんよう) 体長:3cm
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蛹化(ようか)の瞬間は観察できませんでした。ぶら下がったまま、たぶん、夜に、最後の脱皮をしたのでしょう。朝には、虫かごの蓋の裏で(さなぎ)になっていました。棘(とげ)状の突起の中、10個が、光の加減で、銀色にも金色にも見えました。これは、薄い透明な膜が数層重なっているからだそうですが、擬態なのか、防衛の手段なのか分かりません。異常がなければ、10日ほどで羽化するでしょう。
7月27日9時: 蛹 体長:2.5cm(円内の画像:7月28日8時40分:蛹 体長:2.5cm)
蝶は、完全変態をする昆虫です。蝉は不完全変態で、蛹にならずに成虫になります。
完全変態:卵→(孵化)→幼虫→(蛹化)→蛹→(羽化)→成虫
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この2、3日、蛹に外観上の変化は見られません。撮影時の光線の具合にもよりますが、少し、表皮が黒くなったかもしれません。
7月30日10時: 蛹 体長:2.5cm
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蛹化(ようか)後、7日目。まだ、変化は見られません。
8月2日11時: 蛹 体長:2.5cm
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予測より1日早く、無事に羽化しました。蛹化(ようか)後、9日目です。♂でした。羽化の様子は残念ながら観察できませんでした。羽化が始まってから、たぶん、2時間ほど経過して、飛べるようになった瞬間です。
赤い液は、羽化したときに、肛門から出た「羽化液」(蛹から成虫になるまでに必要だった体液の老廃物)です。
8月4日8時35分: 成虫 前翅開張:8cmほど
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飛びたいのでしょう。翅を閉じたり開いたりし始めました。
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虫かごの中の側面にも這い上がりました。
8月4日8時40分: 成虫
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虫かご(飼育かご)に手を入れると、指先にとまりました。この後、窓を開けたら、晴れた夏空に舞い上がって行きました。
8月4日8時40分: 成虫 前翅開張:8cmほど
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あとに残った蛹(さなぎ)の抜け殻です。頭の方(下)が裂けていました。
8月4日8時40分: 蛹の抜け殻
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ツマグロヒョウモンは、雌雄、翅の模様がまったく異なり、ほかの蝶とは違って、♀の方が、きれいです。
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昆虫の脚は、6本ですが、タテハチョウ科の仲間は、4本脚です。前の2本が退化して短くなって、通常は、小さく折り畳まれています。この前脚は先端の感覚毛で味を感じることができ、感覚器官としての働きに特化しています。幼虫の食草のスミレもこの退化した前脚で感じ取っています。
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今日の名言:
 
若かる我は見つつ観ざりき 北原 白秋